朽ち果てしアイリスの薗(11)

本日は冬至ですね。
かぼちゃ料理とゆず湯で身体の芯からあったまり、一緒に冬を乗り越えましょう。

このサイトは毎日更新を目指しておりますが、年末に向けて忙しくなってきたのでどこかで途切れるかもしれません。
ご容赦願います。

「朽ち果てしアイリスの薗」続き。
お読みの方は続きからどうぞ。

私信
＞澪月さん
麻衣への愛故にですよv
私的な見解ですが、私としては愛の大きさは麻衣＜ナルなんで。
麻衣も勿論ナルのこと大好きですけど、ナルは隠れた部分の愛が大きいと思うので。
ハッピーエンドに、したいですねぇ・・・・・（遠い目

白い、アイリスの花。



まどかさんが持ってきた香水は、あの日劇場の門で香った香りと同じだった。






甘く、淡い。














「リン、人形をつくれるか？」

「これだけの資料があるなら、何とか可能でしょう。」


今日はもう明け方近い。
結局、明日（といっても今日なんだけど）の晩、裏庭の湖にフェリシアが現れたところに、リンさんがエリックの人形を作り除霊することになった。


「夜に向けての準備をする。みなさんで機材の設置を。それが終われば仮眠してくださってもかまいません。」

「りょーかい。」














あたしたちはナルの指示通り、機材を設置する。
湖の傍に設置したら、コードを裏庭のすぐ傍の館の廊下へと引っ張る。
あたしはしゃがんで配線を確認していた。
ふと、気配を感じて振り返る。


「・・・・・・・フェリシア・・・・・」


白いドレスを身に纏ったフェリシアがそこに立っていた。
あたしは前回みたいに慌てたりはしない。
インカムに向かって小声で告げる。


「・・・・・ナル。今、フェリシアが目の前にいる。」

『どこだ？』

「湖の傍の西側の廊下。」

『わかった。すぐに行く。』


ナルの機械的な声に、あたしは平常心を取り戻した。
ゆっくりと近づいてくるフェリシアを見つめる。


『ジーン・・・・。』


切ない声が、胸を打った。
強制的に別れさせられたときの場面を思い出す。


『・・・・・どうして・・・・？』


はっと気がつけば、目の前にフェリシアの顔。
びくっとして後ろに下がったが、すでに壁。


『どうして・・・・誓いを・・・・・』


フェリシアの手が顔に触れた。


「―――――麻衣っ！！」

「麻衣っ！？」


ナルの声と真砂子の叫び声を最後に、あたしの意識はフェリシアに引っ張られた。













台本を見ながら、二人で話をした。


『ロミオとジュリエットのお話は好きじゃないけど、ロミオの台詞は好きなの。』

『どうして？』

『だって、すごく愛してくれているのが分かるんですもの。』

『そうだね。』

『とくにロミオの誓いはすごく好きだわ。言われてみたい。』

『じゃあ、約束するよ。』

『え？』

 

『劇中でのロミオの台詞は、誓いは、全部僕から君への誓いだよ。』







『・・・・・・ジーンったら。』

『ほんとだよ？それに、ほら。』

『何？』

『君がロミオとジュリエットの結末が嫌いだって言っていたから、僕なりに新しい結末を考えてきたんだ。』

『見せて見せて！！』


紙に書かれた文字を読む。
思わず、顔がほころんだ。


『・・・・・本来の最終幕の後のお話ね。』

『うん。どうかな？』

『・・・・・すごくいいわ。これ、演じてみたい。』

『じゃあ、演じてみようよ。』

『でも、今日は最終公演なのよ？今更は無理よ。』

『じゃあ、今夜、裏庭の湖でやってみようよ。あそこなら誰も来ないし、フェリシア、あの場所好きだろう？今夜は満月で明るいし、アイリスの花も見ごろだ。』

『ええ。』

『約束な。』

『わかったわ。約束よ。』


笑いあって、そう、約束をした。

 

 

（・・・・・これが、『最終幕』・・・・？）

裏庭の湖。咲き誇る白いアイリス。
満月の下で演じるはずだった、二人だけの、最終幕。













「麻衣。気がついたか？」

「・・・・ナ、ル・・・・。」

「そうだ。」


差し出された手をとって、あたしは起き上がった。


「・・・・麻衣・・・・。」


声がした方を振り向けば、真砂子が涙を流していた。
それだけで、分かった。


「・・・・・真砂子も、視たの？」

「・・・少しだけですけど、視えましたわ。」

「何の話だ？」


ぼーさんの問いに、真砂子が答えた。


「フェリシアにとっての『最終幕』は、エリックが考えたお話だということですわ。」


真砂子の説明を聞き、ナルはため息をついた。


「通りで見つからないはずだな。幻の最終幕というわけか。」

「・・・うん・・・・。」

「麻衣？」


覇気のないあたしの声に、ナルが不審に思ってあたしを見る。









あたしはその視線を避け、ゆっくりと歩き出した。

















朽ち果てしアイリスの薗　　    ロミオの誓い
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ロミオの誓いは、あなたの誓い。