クリスマスの嫉妬

クリスマスSS。ナル麻衣への道vol.1。
ナルが麻衣を意識し始めている感じで。ナル視点。
ナル：18歳　麻衣：17歳（高校二年生）　12月24日

まだまだ前途多難な恋。
どうする麻衣！？
その辺はぼちぼち書いていきますね～。

続きからどうぞ。

僕のテリトリーは、狭い。

ジーンと、僕。






だけど、














いつの間にか、麻衣がいた。














いつの間にか、胸の奥に燻るモノがあった。














「ナルっ！！メリー・クリスマス！！」


まったく、朝から騒がしい。
所長室から出ると、事務所に来ていた麻衣が開口一番にそう言った。


「ナル？」

「・・・・・お茶。」

「は～い。」


無言で押し切ろうと思ったのだが、まどかが何を吹き込んだのか、こちらが引くまで押し切るということを学んだらしい。
僕はため息をついて、事務所のソファに腰を下ろした。


「ねえ、ナル。安原さんとリンさんは？」

「安原さんは大学の用事、リンは機材の修理に出かけている。」

「あ、そっか。」


忘れてた～、とつぶやいて入れたての紅茶を僕の前に置く。
まったく、昨日言ったばかりだというのに。


「今日ね、ぼーさんはライブだし、綾子は食事会、真砂子は収録で、ジョンはミサなんだよね。」

「・・・・だから？」

「ん？今日暇なのは、あたしとナルだけだってこと。」


麻衣のくだらない戯言に付き合っているなんて、僕はどうかしている。


「僕はあいにくと論文の締め切りが迫っていて忙しいんですが？」

「こっちに出てくるって事は、それなりに進んでるってことでしょ？」


にこにことこっちを向いて笑う。
僕の中へと、踏み込んでくる。


「昨日届いた資料の整理をしておけ。この前の調査のレポートも仕上げておくように。」

「・・・ふぁ～い。」


麻衣にさっさと仕事を押し付け、僕は所長室へと戻る。
机に座り、書きかけの論文を開くが、先ほどの麻衣の言葉が頭の中を反芻する。
・・・・・・・・・最近、こんなことがよくある。
気がつけば、麻衣のことを考えている。


「・・・・・くだらない・・・・。」


時間の浪費だ。
頭を振って、僕は論文へと意識を向けた。














「ナル？」


午後三時。いつのまにかそんなに時間が経っていた。
紅茶を僕の机において、麻衣は言いにくそうに切り出した。


「あのね、さっきメールが来てね、今から高校の友達とクリスマス会しないかって・・・。」


だから早退してもいい？
そう尋ねる麻衣に、僕はなぜかイラついた。
胸の奥のモノが、大きくなる。



いや、麻衣にイラついたのではない。















麻衣が他の誰かとクリスマスを過ごす、そのことが嫌だった。















そこまで考えて、ふと気づく。
なぜ、僕はこんなことを考えている？
だが、その思考が答えに辿り着く前に、僕の口は言葉を発していた。















「駄目だ。」














「なんでよぅっ！？」

「仕事は？」

「・・・・まだ途中だけどさ・・・。」

「なら駄目だ。」


仕事が終わっていないのだから当然だ。
後付けの理由だったが、それでもよかった。


麻衣が、ここにいるなら。













「麻衣。」


項垂れて所長室から出て行こうとしていた麻衣を、僕は呼び止める。
なぜこんなことを言うのか、自分でもわからなかった。

まあ、たまにはこういう行動も悪くないだろう。


「何？」







「今日中に仕事が終わったら、夕飯奢ってやる。」







「・・・・え？」

「いらないのなら別にいいが。」

「え、いやっ、行く行くっ！！行きますっ！！」


麻衣の喜ぶ顔に、ほっとする。
そのことを悟られないように、僕は麻衣に命令した。


「ならさっさと終わらせて来い。」

「は～いっ！！」


麻衣を見送って、僕はゆっくりと息を吐く。

自分の胸の奥で燻っているモノが、何なのかはわからない。
それでも、今はこれでいい気がした。



「クリスマスだしな。」













少なくとも、今、麻衣はここにいるのだから。













クリスマスの嫉妬
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この気持ちが何なのか、僕には理解不能だった。