朽ち果てしアイリスの薗(0)

とりあえずやってみるナル麻衣長編。
一応調査物。ネタばれのアノ人も登場。
悪霊二次創作やるなら避けては通れない英国SPRでのお話。
ナル：20歳　麻衣：19歳（大学２年生）　5月


お読みの方は続きからどうぞ。

 

 

 

闇の中に浮かぶ、白い月。









目の前の湖は、夜だからだろうか、思わず足が引きそうになるほど、暗い。












湖のそばに咲く白い花の香りが、鼻をかすめた。











美しいアイリスの花。










清楚で、可憐で、美しい花。











わたしも、そんな風に、なりたかったの・・・・・・・・





























・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ジーン・・・・・・・・・・・





















英国SPRはケンブリッジの大学の一部に存在する。
その中でも一際奥に位置する、ある意味聖域と化したラボ。
そこで働く森まどかに上層部から呼び出しがあったのは、4月の終わりだった。


「・・・・・・・・どういうことですか、それは。」

「言ったとおりだ。」


はっきり言って、まどかはこの上層部の連中が大嫌いだ。
特に、金と権力に物を言わせて我が物顔をしている連中が。
そんな奴らからの呼び出しに、素直にやって来たことを褒めてもらいたいものだ。


「このオペラ劇場の怪奇現象の調査を、オリヴァー・デイヴィスに頼みたい。」


指定された場所は、ケンブリッジ郊外にある唯一の劇場。
クラッシックな雰囲気で、幾度となく足を運んだことのある、まどかのお気に入りの場所だった。
最も、ここ数年は忙しくて足を運んでいないが。

そこで怪奇現象が起きているという。
内容としては、イギリスではよくみられるタイプの現象だ。
前例では、危険もあまりないし、小さな調査チームでも十分のはずだ。


「なぜオリヴァー・デイヴィスなんです？彼が興味を示す程の怪奇現象とは思えませんが。」


オリヴァー・デイヴィスことナルは、大変気難しい。
天上天下唯我独尊、自分の興味のあること以外にはまったく興味を示さない。
若くして博士号を取得、破格のPK保持者でサイコメトリスト、超心理学では知らない人はいないぐらいの有名で優秀な人物である。
そんなナルほどの人物がわざわざ出てくる必要性を感じない。
こちらとてそのナルの日本の研究の解析作業で目が回るほど忙しいのだ。
疑問を口にしたまどかに、上層部の一人がゆったりと告げた。




「いや、彼は興味を示さずにはいられないだろう。」








そこで一度、言葉を切った。


















「ユージン・デイヴィスが関わっているのだから。」



















まどかは唇をかんだ。
ユージンのことを知るのは、まどかとリンとナル、そしてＳＰＲ日本支部所属者と協力者のみだ。
・・・・・・・・そういうことか。



「どういうことか聞きたいのはこちらなのだがね？ユージン・デイヴィスは死んだ。なのにまだこの世にとどまっているとの報告が入っている。優秀な霊媒であった彼がいまだこの世にとどまり、そして霊と関わりを持っている。」

「・・・・・・・・・・。」

「本当なら今すぐオリヴァー・デイヴィスを呼び戻して、確かめたいところなのだがね。」

「・・・・・・・・・・。」

「まずは君からだ、森まどかチーフ。」





部屋を出た彼女の手には、十数枚に及ぶ書類の束が握られていた。










SPR日本支部こと渋谷サイキックリサーチの事務所の電話が鳴ったのは、一週間後の5月のはじめだった。





















朽ち果てしアイリスの薗　　　　　　黒い闇と白い月
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あなたに恋したことは、罪ですか？