二度目の恋

短編第二弾。
なんとなく書いてみたくなった。
ナル視点。ナルと麻衣が付き合い始めてから２週間ほど。
すっごいナルが別人。甘々。
いつかナル麻衣成立話書きます。
ナル：18歳　麻衣：17歳（高校２年生）　3月末


続きからどうぞ。

『初恋は実らない。』



そんなジンクス、知らない。

















「初恋は実らないって、本当だったんだねぇ・・・・。」


渋谷区道玄坂にある渋谷サイキックリサーチの所長室。
論文を書いていた僕のところへ麻衣が紅茶を持ってきたとき、そう言った。
僕はあえて無視した。


「ナル、聞いてる？」

「聞いてない。」

「聞いてるじゃんかぁ。」


うるさい。論文の邪魔だ。
が、麻衣はお構いなしに続ける。


「『初恋は実らない』っていうジンクスがあるの。知らない？」

「・・・・・・・・。」


ジンクスなどくだらない。
僕は無視したつもりだったが、麻衣はその無言を肯定と受け取ったらしい。


「ナルが知らないんじゃ、このジンクスは日本だけてことなのかなぁ・・・。」


・・・・・・・・・・駄目だ。集中力が切れた。
僕は書きかけの論文を保存して、顔を上げた。
僕の目の前に紅茶を置こうとした麻衣は、驚いて僕を見る。


「どうしたの？ナル。」

「集中が切れた。」

「珍しいね。」

「誰のせいだ。」


ため息をついた僕を、麻衣がむっと睨み付ける。
もっとも、全く怖くはないのだが。むしろこれも麻衣の魅力だろう。


「・・・・・・で？」

「へ？」


自分から話しかけてきたくせに、この反応。
あと10日ほどで高校３年生になるというのに、これは如何なものか。


「『初恋は実らない』という話だろう？言い出したのはお前だぞ。」

「いや、まさか聞いてくれるとは思わなくてさ・・・・。」

「話す気がないなら聞かない。」

「あぁ～っ待って待って！！話すから聞いてよっ！！」


ナルが話聞いてくれるなんて滅多にないしね、と麻衣が笑った。
ついで、僕のデスクにもたれかかる。


「あのね、『初恋は実らない』っていうジンクスがあるの。」

「それが？」

「あたしの初恋も実らなかったなぁ、って思って。」


麻衣の初恋は、ジーン――――僕の兄。
すでに戸籍の人であり、未だに麻衣を縛り付ける者。
僕と世間一般に言う『恋人』となった今でも、それは変わらない。
仕方がないことだと思うときもあれば、イラつくときもある。
・・・・・・・・・・・これが嫉妬というやつか・・・・・・。


「なぜ実らないんだ？」

「え？あぁ、なんだっけな。確か、初めてのことに戸惑ってどのように振舞ったらいいか分からないし、告白するチャンスも逃しやすいから、とかなんとか・・・・？」














まったく・・・・・・


「くだらないな。」













ため息と共に僕が発した言葉に、麻衣が噛み付いてきた。


「なんでよぅ！！」

「僕はジンクスなんて信じていない。」

「そりゃそうだろうけど。」



それに、と僕は続けた。













「僕は初恋が実っているからな。信じることはできそうにない。」

















麻衣はキョトンと聞いていたが、やがて意味が分かったのか、顔を真っ赤にして訊ねてきた。


「それって、あたしが初恋だってコト・・・・？」

「そう聞こえませんでしたか？谷山さん。」


僕にしてはかなりの譲歩。自分からわざわざ教えてやるなんて、どうかしているのかもしれない。



「・・・・・・そっか・・・・・。そうなんだ。」



麻衣がはにかむように呟いた。
そんなうれしそうな声を出されると、僕の悪戯心が刺激されることを麻衣は知らないだろう。
知らなくていい。
そうでなくては、面白くない。



「だから、麻衣。」



麻衣の体を引き寄せて、自分の膝の上に座らせ、向かい合う格好にする。
そして、僕は麻衣の耳元に唇を寄せた。


「・・・・っ！！？」


いまさら気づいたか、もう遅い。
僕は麻衣の弱い、いつもよりも低い声で囁いた。




















「Aren't you in love secondarily with me?」


















もうしてるじゃん、と麻衣が真っ赤な顔で抗議する。
そんな麻衣を胸に抱きしめ、僕は麻衣の柔らかい髪の毛に顔を埋めた。

















手放す気は、毛頭ない。


















二度目の恋
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「僕と二度目の恋をしてみないか？」