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別ジャンルのサイトのほうでは年賀状企画をやるのですが、こっちではどうしましょう・・・?始動したてですし、やっていいのやら・・・・。
年末年始ナル麻衣小話記載年賀状、とかですかね・・・?
欲しい方いらっしゃいましたらご一報ください(いないだろうけどとりあえず言ってみる)。
「朽ち果てしアイリスの薗」続きです。
お読みの方は続きからどうぞ。
劇場は二階建てでかなり大きかったのだが、ひとつひとつの部屋が大きく、部屋数は少なかったので、あたしが予想していた以上に設置は早く終わった。
あたしとぼーさんが手分けして機材を設置する。
あたしは最後の部屋に機材を設置しはじめた。温度を感知する機材はもう配線も終わっているので、あとはカメラを繋げるだけだ。
ふと、あたしは振り返った。
白いドレスが、翻った。
赤い髪の女が、そこに立っていた。
「ナル、部屋の温度が下がり始めました。」
リンの声に全員が振り返る。
ナルは読んでいた資料をおいて、パソコンの画面を見た。
「何度だ。」
「現在、マイナス2度です。」
「マイナス・・・・っ!?」
傍で聞いていた綾子が声を上げるが、ナルは意に介さずに続けた。
「どこの部屋だ。」
「二階の奥の衣装部屋です。」
その後に続いた言葉に、ナルは止まった。
「今、谷山さんが機材を設置している部屋です。」
ガタンと椅子が倒れたがナルはかまわず部屋を飛び出した。
まずいことになったかも、これは・・・・。
目の前にいる女性には、生気が感じられない。これが噂の霊なのだろう。
彼女はゆっくりとあたしに近づいてくる。あたしは金縛りで動けない。
どうしょう・・・・・っ!!
声が出ない。
心の中で叫んだ。
―――――――――――ナルっ!!!
「麻衣っ!!」
声が聞こえて、部屋に飛び込んできた黒い影。
ナルだ。その後からぼーさんたちもやってくる。
女の霊はゆっくりとナルのほうを振り返ると、忽然と姿を消した。
結局あの後、カメラの配線がまだだったため記録できていなかったことに対して散々嫌味を言われたけど、そんなの気にしないことにした。
だって、まどかさんが教えてくれたから。
『ナルってば、あなたのところに霊が出たってリンが言ったら、椅子を蹴飛ばして駆け出したのよ。』
・・・・・うれしい。こんなときに言うのもなんだけど、こんな滅多なことないし、素直にうれしがっても罰は当たらないよね?
こんなたまにしかナルの想いを感じる機会がないのも問題あるか。
もうすぐ日が暮れるというとき、突然綾子が言い出した。
「ちょっと裏庭に行ってきてもいいかしら?」
「裏庭、ですか?」
「そ、散歩がてら視てくるわ。」
「・・・・・・・樹、ですか?」
「そ、これだけ樹があって人のても入っていないんだから、ありそうじゃない?彼女、赤毛ってことだけで名前も素性も分かってないんでしょう?真砂子の呼びかけにも応えない。麻衣の情報収集を当てにしてたらいつになるかわかんないし。」
悪かったねっ!!どうせ不安定な力ですよっ!!
が、正論なので反論できない。
「少年たちが調べても、過去の劇場関係者の中で赤毛の女性なんていっぱいいるでしょうし。あたしが視るのが一番早いはずよ。」
が、ナルはスパっと反対した。
「駄目です。もう日が暮れる。」
しかし、綾子は言い募った。
「日が暮れるからよ。女の霊は夜にだけ裏庭の湖に出るんでしょう?だったらこの時間のほうが近い部分が視えるのよ。」
「時間が関係あるのですか?」
「一応ね。ハッキリ視れるに越したことじゃない。危険性が少ない今のうちにやるのがいいと思うのよね。さっきちらりと見て樹の当てはついてるし。」
綾子の言い分にも一理ある。それに、正確なデータはナルの最も欲しがるものだ。
ナルはしぶしぶ頷いた。
「・・・・・わかりました。ぼーさんと麻衣、付いて行け。」
「あたしも?」
「ちょっと待て。俺はわかるけど麻衣はいいだろう?さっき憑依されそうになったじゃないか。」
もうすぐ日が暮れる。霊が最も活性化する時間が近づいている。
それにその女の霊は、若い女性に憑依するという。綾子だってまだ20代だから危険だし、あたしはさっき一度憑依されそうになってる。ぼーさんもいっぺんに2人を守れるとは言い切れないのだろう。
が、ナルは同意しなかった。
「ここにいても、ここには霊を退ける者がいないから意味がない。退魔法を心得ている松崎さんとぼーさんと一緒にいるほうが安全だろう。」
・・・・・・ホントに、よく回る頭ですこと。
でも、うれしい。ナルが心配してくれてる。本当は優しいんだよね、ナルは。
「麻衣、いつまでボーっとしているつもりだ。早く行け。」
気づけばいつの間にかぼーさんと綾子はドアから出て行こうとしていた。
・・・・・・・・・・前言撤回。全然優しくないっ!!
あたしは大慌てで席を立ち、ぼーさんたちのところへ駆け寄った。
ついでに、あからさまなため息をついたナルに舌を出しておく。
「行ってきますーっだ。」
「いってらっしゃい。」
ナルの返事の代わりに安原さんの笑顔に見送られ、あたしたちは部屋を後にした。
そうして、あたしたち三人は裏庭の湖の傍にやってきた。
綾子は目をつけていた樹に寄りかかって、目を閉じる。
ちょうど湖が見える位置に生えている樹だ。
・・・・・・・・いつも思うけど、こういうときの綾子を見てると、本当に巫女さんなんだなぁって実感するんだよね・・・・。
しばらく目を閉じていた綾子は、樹から身を離した。
「視えたの?」
「視えたわよ。あの女性の霊、この湖に飛び込んだみたいね。」
つまりは、自殺。
何度もそういう霊には会ってきたけれど、やっぱりつらい。
そんなあたしの頭をぼーさんがぽんぽんと叩いた。
「声もかろうじて聞こえたわ。あたしが視たのはこの湖での出来事だけだけど、大体の事情は掴めたと思うわ。死ぬ直前も『ジーン』って叫んでる。後ろから何人もの人たちも駆けよって来て止めようとしたみたいだけど、駄目だったみたいね。間に合わずにそのまま湖に飛び込んで、彼女は浮いてこなかった。」
あたしはつらくなってますます俯いた。
全部視た綾子のほうがもっとつらいだろうけど、綾子は顔をしかめながら続けた。
「湖の淵で何人もの人が彼女の名前を叫んでた。あたしが視えたのはそこまでよ。」
「じゃあ、名前は分かったのか。」
ぼーさんが勢い込んで尋ねた。綾子は頷く。
「これが一番大きな収穫ね。名前はフェリシアと言うそうよ。」
フェリシア。
彼女に自殺を迫るほどの出来事があったのだろうか?
一体どうして、自殺なんかしたの・・・?
『ジーン』って、誰のこと・・・・?
ジーンと、関係あるの・・・・?
分からないことばかりで、頭がパンクしそうだ。
あたしたちはナルに報告するために、ベースへと引き返した。
ベースでの報告が終わった後、安原さんとまどかさんの調べで、フェリシアがこの劇場の関係者だということが分かった。
フェリシアという女性は何人かいたが、自殺したのは一人だけ。
彼女はこの劇場での公演中に自殺したらしい。1897年のことだという。
あたしはそれを聞いて、胸をなでおろした。
だって、ジーンは関係ない。そのとき、まだジーンは生まれてないんだから。
でも、どうして?
関係ないなら、調査チームはなんでここでジーンの気配を感じたの?
結界みたいなものに囚われているって、どういうこと・・・・?
あたしはやっぱり分からずに、ぐるぐると思考をめぐらせながら、その夜眠りに付いた。
そして、夢を見た。
朽ち果てしアイリスの薗 樹が視たコト
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
狂おしいほど、あなたを、愛していたの。

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