悪霊only二次創作グログ

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長編(調査物)の続きです。
何話で終わるかはまだ不明。
続きからどうぞ。
何話で終わるかはまだ不明。
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5月はじめの穏やかな午後。
渋谷区道玄坂にある渋谷サイキックリサーチの事務所に、ほんのりと柔らかな紅茶の匂いが漂った。
台所でお茶を入れていたあたし――――谷山麻衣は満足して頷いた。
「よし。」
ここでバイトを始めて早3年。最初の頃は『飲むに耐えない』と切り捨てられていた紅茶も、今はずいぶんとうまく入れられるようになったと自分でも思う。
紅茶の茶葉にも自然と詳しくなったし、紅茶の本場英国の人にも絶賛された(一名は特にコメントはないけれども)のだから、少しは自信を持っても自惚れではないだろう。
あたしはオフィスに戻り、同じバイトの安原さんにお茶を差し出した。
「どうぞ、安原さん。」
「ありがとうございます。いやぁ、いい香りですねぇ。」
「今の時期は香りのいいのが出回りますからね。」
そのあと、あたしは所長室に向かう。
ドアをノックして、返事がないのはわかっているので、勝手にあけて入る。
「ナル、お茶だよ。」
デスクで資料と戯れている此処の所長、渋谷一也(本名オリヴァー・デイヴィス)こと、通称ナル。
これぞ神のもたらした奇跡だろうか。
漆黒の髪と瞳、長いまつげ、白皙の美貌。
まるでどこかの芸術品のようだとしみじみ思う。
天上天下唯我独尊の性格で口を開けば毒舌罵詈雑言が飛び出すが、黙っていれば文句なしというか文句のつけようがないというか文句をつけさせてもらえないほどの美形。
・・・・・・・・・・神様って、不公平だよね。
あたしはしみじみ悲しくなってくる。
これほどの美形を彼氏に持つなんて贅沢だとか羨ましいとか言われるけど、横に並ぶとあたしは少し気が引ける。
まぁ、最近は周りの視線にも慣れてきたし、ナルもそういうことは気にしない性質だから、大丈夫なんだけど。
「其処においておいてくれ。」
「はーい。」
現在は本国に提出する論文の真っ最中。
事務所に来ては所長室にお篭もりの毎日だ。
あたしもこのところドタバタで、ナルの家に行っていないから少し心配だ。
そう思って、デスクに近づき紅茶を置くときに、ナルの顔を盗み見る。
近くに来てわかる、目の下の隈。
・・・・・・・・コイツ・・・・・。
「・・・・・・・・・・何日寝てないわけ?」
「・・・・・・・・。」
・・・・・・・おいおい、無視かい。
ナルの手が紅茶に伸びる寸前に、あたしはカップを取り上げる。
「・・・・・・・・・麻衣。」
「何日寝てないわけ?」
抗議の絶対零度の視線もなんのその。
これくらい軽く受け流せなくては、ナルの世話などできない。
にっこり笑って、あたしは再び同じ質問をした。
「紅茶。」
「質問に答えてくれたらね。」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
無言の攻防が続くが、時間がもったいないと判断したのか、ナルのほうが折れた。
「・・・・・3日ぐらいじゃないのか?」
「あ ん た わ っ !!!」
取り上げた紅茶をお盆ごと脇の小さなテーブルに置き、バンっとデスクに手を叩きつけた。
資料が数枚舞うが、知ったこっちゃない。
「麻衣。資料を拾え。」
「知るかっ!!あたしちゃんと寝てって言ったよね!?あたしほどじゃなくてもいいから(絶対無理だし)せめて一日1~2時間は睡眠とってって!!」
「了承した覚えはない。」
「睡眠とらないと人間の脳は回転が鈍くなるんだよっ!!そんなんじゃ今書いてる論文だって絶対はかどらないし、倒れたら元も子もないでしょうっ!?人間身体が資本なんだよっ!!」
「谷山さんと違って、僕は睡眠とらなくても頭の回転は鈍りませんので論文もはかどっております。」
「はかどってるなら寝ろっ!!」
「1時間で論文の原稿は15枚程度進む。時間がもったいない。」
「いいから寝ろっ!!」
「寝てる時間がもったいない。論文も早く仕上がる。」
このマッドサイエンティストがっ!!!!
このやり取りもいつものことだし、いい加減に飽きてもいいんじゃないかとぼーさんや綾子には言われてるけど、飽きてでも言わないと、この研究馬鹿は聴いちゃくれないのだ。
そんないつもの押し問答が続いていたとき、不意に事務所の電話が鳴った。
「―――――もしもし。」
どうやら安原さんが出てくれたみたいだ。
が、電話のせいで、さっきの勢いがそがれてしまった。
あたしが電話の音に気を取られている隙に、ナルは自分でカップを取って飲んでるし。
・・・・・・・油断した・・・・・。
その時、所長室のドアが開いて安原さんが顔を出した。
「所長、森さんからお電話です。」
「代わります。それと麻衣、お茶。」
紅茶のカップを置き、所長室で電話を取ったナルをあたしは恨めしい目で見ながら所長室を出る。
台所でカップを洗い、お湯を沸かす。
ぶつぶつ文句を言いながらお茶を入れるあたしも、なんだかんだでナルに甘いよなぁ。
「どういうことだ、まどか。」
新しく紅茶を入れて所長室のドアをノックしようとしたとき、ドアの向こう側でナルが声を荒げたのが聞こえた。
思わず安原さんを見る。安原さんも聞こえたらしく、驚いた顔でこちらを見る。
ナルが声を荒げるなんて、滅多にないというか聞いたことがない。
まどかさんからの電話だから、本国から何か依頼が来たんだろうか。
「いったい何をやっている。どうして抑えられなかったんだ。」
聞こえてくる声は未だに荒っぽい。
所長室に入るのが躊躇われて、あたしは回れ右をして自分のデスクに座った。
「どうしたんでしょうねぇ?」
「さぁ?まどかさんからなんですよね?」
「ええ。」
あたしに訊かれてもわかるはずがない。
とりあえず依頼だとして、受けるとしたらナルの方から言うだろうし、それまで待つばかりだ。
それにしても、ナルが声を荒げるなんて、よっぽどの出来事だろうか。
冷めてしまった紅茶を入れ直そうと思って台所に入ったとき、背後でドアの開く音がして振り返ると、リンさんが資材室から出てきた。
少し慌てた様子に首を傾げながら、一応尋ねてみる。
「リンさん、お茶飲みますか?」
「いえ、後で。それより、ナルは?先ほどの電話は・・・・・。」
その質問には安原さんが答える。
「所長は所長室です。先ほどの電話は森さんからでした。」
「まどかからですか・・・・。」
顎に手を当てて何か考え込む仕草をするリンさんに、安原さんはあたしの訊きたいことをズバリと訊いてくれた。
「リンさん。もしかしなくとも何かご存知なんじゃないですか?」
うわっ、そんなストレートに。
さすが越後屋というか。どうしてそんなにさらりと訊けちゃうんだろうか。
が、リンさんも隠すつもりはない様で、頷いた。
「ええ、まどかからメールが入っていました。」
「それで、何なんですか?」
今度はあたしから訊いてみる。
するとリンさんはあたしの方を見て、言いにくそうに目を伏せた。
「谷山さんには、少しショックなことかもしれません。」
「何ですか?」
そんなこと言われたら、訊かずにはいられないじゃないか。
リンさんは、ゆっくりと口を開いた。
「本国で、シーンのことがバレました。」
その言葉は、あたしを完全に凍らせた。
あたしの手から、カップが落ちて、割れた。
朽ち果てしアイリスの薗 本国からの電話
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あなたは、今も変わらずに、此処にいるの?
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