朽ち果てしアイリスの薗(15)

ラストです。
長いお付き合い、ありがとうございました。


読んでくれた全ての人に、感謝を。


「朽ち果てしアイリスの薗」完結。
エピローグです。


私信
＞澪月さん
どこまでも甘いバカップルに拍手を。ついでに私に角砂糖をっ！！（必死
ジーンはですね、おおとりですので、最後においしいとこを持っていくんです。
澪月さんも風邪に打ち勝って下さい。ナル麻衣パワーで！！

あの晩、咲き誇った白いアイリスは、一晩にして消えてしまった。








彼らが起こした、最後の奇跡なのかもしれない。














事件解決から一週間後、あたしたちは再びあの劇場へと足を運んだ。
『ロミオとジュリエット』の最終公演に招待されたのだ。
最終幕では、エリックが考えたあの最終幕を演じるという。


「彼らを弔うためにも、毎年最終公演の最終幕は、あれを演じようと思います。」


そう言って、劇場のオーナーは笑っていた。
演じていた人たちはフェリシアとエリックではないけれど、それでもすばらしい演技だったと思う。
観客にもとても好評だったそうだ。
きっと、みんなハッピーエンドの方が好きなんだろうから。


劇が終わった後、あたしたちは裏庭の湖に白いアイリスの花束を投げた。
ここも、劇場のみんなで再び白いアイリスを植えるそうだ。


二人が気に入っていた、白いアイリスの薗。
綺麗に咲いたら写真を送る、とオーナーは笑ってあたしたちを見送ってくれた。





その後、イレギュラーズは日本へと帰っていった。



あたしとナルはというと・・・・















「ジーン。」


ケンブリッジにある、小さな丘。
そこに建てられている、一つのお墓。

ジーンの、お墓。


「今回、助けてくれてありがとう。」


ジーンがあたしに視せたいくつかの夢。
その夢がなければ、あたしたちはフェリシアを救ってやれなかっただろう。


「もう、解放されてるんだよね・・・？」

「そう言っていた。」


あの事件の後、なんとジーンはあたしではなくナルに連絡を取ったらしい。
無事に解放されたことと、フェリシアたちを救ってくれたことのお礼を述べていたと聞いた。


「ジーンと、何か話した？」

「別に。」

「喧嘩でもしたの？」

「・・・・・。」


無言・・・・てことは図星かな？
たぶんナルが文句を言って、ジーンはそれを笑いながら聞き流していただけだろうけど。
そんな光景が、リアルに目に浮かんできて、あたしはくすりと笑った。


「何だ？」

「・・・なんでもない。」


言ったら怒られるだろうから、言わないけど。
たまにしか会えないんだから、もっと仲良くすればいいのにね。
でも、それがこの双子のスキンシップなんだろう。


「ジーン、これ。」


あたしは白いアイリスの花束をお墓に供える。
今回の事件で、あたしにとって特別な花となった、白いアイリス。
幸せの、象徴。


「・・・・行くぞ、麻衣。午後からは検査なんだろう？」


あたしとナルは今ＳＰＲの本部にいる。
あたしの能力の検査・実験が主な理由。
だけど、ナルも溜まっていた資料やパトロンたちへの挨拶回りで相当忙しい。
日本への帰国は、一週間後だ。


「ナルは？」

「・・・・・・・。」

「あ、なんかかなり金持ちのパトロンが来るんだっけ？」


苦手なんだ？とあたしはナルを見上げる。


「・・・・・・うるさい。いいから行くぞ。」


あたしの手を握り、ナルは歩き出す。
あたしはナルの手を握り返し、その綺麗な顔を見上げた。


「日本に帰ったら、事務所に白いアイリスの花を生けてもいい？」

「・・・・・・勝手にしろ。」

「うん、ありがとう。」


こういうやさしいところが、好きなんだよね。
あたしはうれしくて、ナルの腕にしがみついてやった。















ふと、あたしは空を見上げる。


英国は、今日は晴れ。






雲ひとつない、綺麗な青空。














この空の向こうに、二人はいるのだろうか。














幸せなとき時を、過ごしているのだろうか。















願わくば、














彼らが永遠に共にあり、














最高の幸せを、手に掴まんことを。















朽ち果てしアイリスの薗　　    　永遠に、共に
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いつまでも、しあわせであるように。