大掃除の合間に

年末大掃除ネタ。
かつ、麻衣の自覚編。
事務所の大掃除を開始した麻衣は・・・・・？

ぶっつけ本番。まとまりないのでそのうち改稿するかも。

ナル：18歳　麻衣：17歳（高校2年生） 12月末

ではどうぞ。

ナルにとってのあたしって、一体何？







聞きたくても聞けない、秘密の質問。










胸の奥の、膨らんでいく想いと一緒に、蓋をしていた。














寒い風が室内を巡る。
いつもは暖房が効いて快適なはずの渋谷サイキックリサーチの事務所も、今日ばかりは暖房を切って窓を開けている。
年末恒例の大掃除の真っ最中だ。

・・・・・・・いや、この事務所に限ってそういう習慣はないのだろうが。
やっぱり日本人としては年末は綺麗にして新しい年を迎えようというものだ。

そんなわけで、あたしは窓を全開にして掃除機で駆け回っている。
部屋が綺麗になるのは、気持ちがいい。

ついつい掃除に夢中になっていたあたしは、気がつかなかった。
掃除機の音がうるさいせいもあったのだろうが。



事務所の時計が、午後3時を告げたことに。














「麻衣。」


あたしは掃除機をかけ終え、窓を拭いていた。
そこへ、所長室の扉が開いて、ナルが姿を現す。
窓が開いていて寒いのか、少し身体を振るわせた。


「ナル、どうかしたの？」


風で髪の毛が揺れる。
それを抑えるように、ナルは髪の毛をかきあげる。

・・・・・・・思わず、見惚れてしまいそうだ。

が、博士様の機嫌は最悪だった。


「お茶。時間を過ぎていると思うんですが？谷山さん。」

「・・・・えぇっ！？」


あわてて時計を見る。
時刻は午後3時40分。

いつものお茶の時間を、40分もオーバーだ。


「うわわわごめんっ！！今淹れますっ！！」


雑巾を放り投げ、あたしは給湯室に駆け込む。
今日に限って安原さんはいないし、リンさんは年末の買出しだ。
薬缶をコンロにかけ、手早くお茶の用意をする。


「・・・・・うぅ・・・失敗した・・・・。」


年末年始にイギリスに帰らない代わりに、大量の仕事を本部から押し付けられているナルの機嫌は、この数日最悪だった。
そこへあたしのミス。

・・・・・・ナルの機嫌は・・・・・・。






「・・・・・考えたくない・・・・。」






ナルの機嫌を少しでも回復させようと、あたしは紅茶を淹れる。
渋くならないように気をつけて。

・・・・・・・いや、ここまできたら焼け石に水だよね・・・・。

紅茶をお盆に載せ、あたしは重い気分で給湯室を出た。
驚いたことに、ナルは事務室にいた。

夕焼けが、ナルを照らす。





思わず、胸が高鳴った。














ジーンが好きな、はず、なのに・・・・。
















もう気づいてない振りはできないくらい、想いは膨らんでしまっている。
















ジーン・・・・・























――――――――ごめんね。

















もう、無理だよ。



















「麻衣？」


いつの間にか、あたしの目の前にナルがいた。


「―――――ぅわぁぁっ！！？」


びっくりしてお盆を取り落としそうになる。
が、意に反してお盆は落ちなかった。



ナルが、支えてくれていたのだ。













顔が赤くなるのが分かった。














「ご、ごめん、ナル。」

「別に。」


そう言って、ナルはお盆から紅茶を取り上げる。
その優雅な仕草に、あたしはまた見惚れた。


「麻衣は飲まないのか？」

「え、うん。まだいいや。掃除途中だしね。」


これ以上ナルの顔を見ていられなくて、あたしは掃除に戻ろうとする。
が、ナルに腕をつかまれた。


「待て。」

「・・・・な、何？」


振り向けない。









「身体が冷えている。掃除は暖まってからにしろ。風邪を引く。」













予想外の言葉に、あたしは目を見開いた。


・・・心配、してくれてる・・・・？






「いいな？」

「・・・・・うん、分かった。」



逆らえずに頷くと、ナルが笑う気配がした。


「ここは寒いから所長室で。ついでにお茶のおかわりを。」


そう言って、ナルは所長室に消えていった。





ナルに掴まれた手が熱い。




















自覚せずにはいられない。















・・・・・・ナルが、好き。
















あたしは、ナルが好きなんだ。














自覚すると、なんだかすとんと気持ちが落ち着いた。
うん、大丈夫。

今度の紅茶は、想いを込めて。
でも、運ぶのは顔のほてりが治まってからにしよう。
窓から入ってくる北風が、気持ちいい。



所長室を見る。


扉は、少し開いていた。





やさしさが、くすぐったい。







大掃除の合間の休憩は、少し、長くなりそうだ。



















ナルにとってのあたしって、一体何？



聞いてみたいけど、また今度にしよう。














今はこの距離感が、心地良いから。














大掃除の合間に
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さよなら、あたしの初恋