年越しのキス

年越し大晦日ネタ。
王道・・・？王道かも・・・・。

ナル：19歳　麻衣：18歳（高校3年生）

ではどうぞ。

私信
＞澪月さん
博士はとことん無自覚でいてもらいます（笑
一生手放しません。手放せません。
だって御大ですものっ（ぇ
魔神・・・・黒魔神・・・・。似合うなぁ・・・。
あ、そういえばメール届いてませんか？
何回も送ってるのですが・・・・。
27日から返事が来ないので・・・・・・。

窓の外の雪が、世界を閉じる。









あたしと、ナルの世界。















本日は大晦日。
世間では年越しだの除夜の鐘だの大騒ぎだ。

が、そんなもの、あたし――谷山麻衣には関係ない。

勉強道具をリビングテーブルに広げて、必死にペンを動かす。
高校3年生の今年、受験勉強のため、時間を無駄にはできない。
なので今年は毎年お馴染みの紅白歌合戦を見ることはできない。
現家庭教師の安原さんに山のように課題を出されたのだ。


「ううう・・・・虚しい・・・。」


年越しそばも食べたし、気分はばっちり大晦日の夜。
なのに紅白がない。
全然今年の終わりという気分がしない。


「・・・・一人は、寂しいよ、ね・・・。」


ナルの家は広い。
当然のごとくナルは自分の部屋にお篭りだ。
広いリビングに、あたし一人。

近くにいるのに、傍にはいないのだ。

時間は11時45分をまわった所。


「・・・・お茶飲もう・・・。」


立ち上がってキッチンへ行く。
薬缶を火にかけて、テキパキと紅茶を用意する。
そのとき、リビングの奥の扉が開いた。


「麻衣、お茶。」


ナルが本を抱えて出てくる。
そしてソファに座って読み出した。


「ナイスタイミング。ちょうど淹れるとこだったの。紅茶でいいよね？リクエストは？」

「なんでもいい。」

「OK。少し待ってて。」


もう夜も遅い。課題もあと少しで終わりそうだ。
あたしはダージリンを濃いくならないように気をつけながら淹れた。


「ナル、はい。」

「ああ。」


ナルの前に紅茶を置き、あたしはナルの足元に座り込んだ。
はー、落ち着く。


「麻衣。」

「何？」

「・・・・・邪魔なんだが。」

「別にいつも平気じゃんか。」

「・・・・・課題は？」

「もう終わるもん。ちょっと休憩だよ。」


口を尖らせてあたしは紅茶を飲んだ。
もうナルは何も言わない。黙って手持ちの本を読んでいる。


「ナルー。」

「何だ。」


時間は11時55分。


「今年ももう終わるよー。」

「・・・そうだな。」


あたしにとって、この一年は大きな変化があった。















それは、ナルと恋人という関係になったこと。















「ありがとうね、ナル。」

「・・・なんだ、急に。」

「えへへー。もうすぐ今年も終わるし。今年のお礼は今年中に言っとかなきゃね。」

「・・・・・そんなものか。」

「そんなものなんです。」


あたしは笑ってナルの膝に顔をうずめた。
この居場所がとても安心する。心が安らぐ。

この居場所をくれたナルには、感謝してもしきれないくらいだ。


「ナル、後一分だよ。」

「そうだな。」

「何か言っておくことはない？」

「別に。」

「かわいくなーい。」


あたしはぷうっと頬を膨らした。
ナルはため息をついて本を閉じた。集中が切れたらしい。


「集中切れた？お茶のお代わりいる？」

「いい。」


あたしの体が宙に浮いた。
ナルはあたしを抱き上げ、向かい合う形で膝に座らせる。


「ナル？」

「だまってろ。」


後、30秒。


「んっ！？」


やわらかい感触と共に、口を塞がれた。

大分慣れたようで、実は全然慣れない感触。
















ナルのキス。















「んぅ・・・っ・・・」


・・・・・長い。

こんなに長いのは初めてだ。

舌を絡められて、息ができなくて、苦しい。


たっぷり、30秒。






「―――はぁっ！！」


唇が離れ、大きく息を吸い込んだあたしの耳に聞こえてきたのは―――


「年が明けたな。」


除夜の鐘と、ナルの低いテノール。
にらみつけたあたしを見て、ナルは意地の悪い笑みを浮かべた。


「去年はありがとう。今年もよろしく。」


日本ではこう言うんだろう？
・・・・・ほんとに、素直じゃない。








「・・・うん。あたしこそ、去年はありがとう。今年もよろしくね、ナル。」





言うと同時に首に抱きついて、お返しのキスを贈った。




















年越しのキスに想いを込めて。















ありがとう、そして、よろしく。

















年越しのキス
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
一年間の全ての想いを込めて。