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いったい何歳なんですかあなた。
まぁそれはちょっとそっちに置いておいて。
リンさん誕生日小説。
ではどうぞ~。
一月にしては暖かい午後。
資料室にパソコンのメール受信の電子音が響いた。
『誕生日おめでとうリン!!メール見た?』
電話を取ると同時に聞こえてきたまどかの声に、リンは肩を落とした。
「・・・ありがとうございます。メールは見ましたよ。」
『あれ、誕生日プレゼントよv』
「・・・あの仕事が、ですか・・・。」
『そうよー。よろしくねv』
「・・・わかりました・・・。」
そう言って電話を切り、リンはもう一度パソコンのメールを見る。
まどかからのメール。
曰く、
『年末年始、ナルがこちらに戻ってこなかったので、仕事が溜まってます。
面倒だけど、上もうるさいし、二月の初めにこちらに戻ってくるように説得して頂戴。
添付したものはナルの仕事リストです。
こちらに戻ってくるときに仕上げて持ってきてね。』
「・・・・・。」
一体どうしろというのか。
年末に調査にいった事件のデータ解析で今は手一杯だ。
思っていたよりもあまりデータが取れなくて、今のナルの機嫌は最低最悪。
これ以上ブリザードを事務所で起こすわけにはいかない。
リンが頭を抱えてうなりたい衝動に駆られたとき、事務所の扉が開いて元気な声が聞こえてきた。
「こんにちはー。」
「おや、谷山さん。早かったんですね。」
「うん、そうなの。安原さん、準備は?」
「僕の分でしたらできてますよ。」
「ありがとー。」
パタパタとこちらに足音が近づいてくる。
資料室のドアをたたく音がして、麻衣が顔を出した。
「リンさん、手紙と小包が来てましたよ。」
麻衣が差し出したそれらを受け取って、宛名を見る。
手紙はマーティンとルエラ、小包はまどかからだった。
「・・・・ありがとうございます。」
「お茶淹れますけど、どうします?」
「そちらでいただきます。」
「わかりました。あとでお呼びしますねー。」
そう言って麻衣は事務室のほうへ戻っていった。
麻衣を見送ってから、リンはまずマーティンとルエラからの手紙を開ける。
中にはバースデーカードとナルの面倒を見ていることに対してのお礼の手紙が入っていた。
「・・・マメですね・・・。」
次いでまどかからの小包を開ける。
出てきたのは三本のシンプルな柄のネクタイ。
箱には『Happy Birthday』と書かれている。
「・・・仕事が誕生日プレゼントだと言っていたのに・・・・。」
リンは思わず苦笑した。
夜にもう一度お礼の電話をしなければ。
きっと笑われるだろうけれど。
手紙と小包をそっと机の引き出しにしまったとき、再び麻衣が顔をのぞかせた。
「リンさん、お茶入りましたよ?」
「今行きます。」
事務所に出たリンは、違和感に首を傾げた。
部屋に立ち込めるお茶の香りが、いつもと違う。
「リンさん、座らないんですか?」
安原に促されて、リンはソファに腰を下ろした。
「どうぞ。」
麻衣が差し出してきたお茶は、やはり思った通りいつもと違っていた。
いつもの茶器ではないし、いつものお茶ではない。
これは―――
「・・・中国茶、ですか。」
「はい。」
麻衣ははにかむように笑った。
「リンさん、今日誕生日なんですよね。ナルから聞きました。」
「ナルから・・・ですか・・・?」
「はい。昨日急に聞いたんで、誕生日プレゼント用意できそうになくて。そもそもリンさんの趣味なんてわからないし。そうしたらナルが『お茶にしろ』って。」
「茶器は僕からのプレゼントです。」
安原さんがにっこりと笑う。
リンはゆっくりとお茶を飲んだ。
口に広がる、さっぱりとした風味。
少し薄いと感じる、このお茶は・・・。
「・・・ジュンシャンインジェン、ですね・・・。」
「リンさんの好きなお茶なんですよね?ナルが教えてくれました。」
「そうですか・・・。」
淹れる水で味が変わるほどデリケートなお茶。
漢字では『君山銀針』と書く。
中国湖南省北部にある洞庭湖の中にある、君山島で採れる茶葉から作られるお茶。
現在、君山銀針は緑茶タイプと黄茶タイプの2種類があり、黄茶の方が高級とされている。
年間生産量は1000Kgにすぎないともされる貴重品で、本物の君山銀針は100グラムで数千円をくだらないはずだ。
麻衣が入れてくれたお茶は、黄茶のほうだった。
「黄茶のほうは高いと思うのですが・・・。」
「ナルが折半してくれました。」
「ありがとうございます。おいしいですよ。」
麻衣はほっとしたように笑った。
「よかったぁ。初めて淹れたんで、すごく緊張したんですよ。」
そのとき、所長室の扉が開いて、ナルが顔を出した。
「麻衣、お茶。」
「はーい。」
給湯室に駆け込んでいく麻衣を見送って、リンはナルに頭を下げた。
「ナル、ありがとうございます。」
「・・・別に・・・。」
ぶっきらぼうに答える仕草は、昔からの、ナルの照れているときの合図。
青年になっても変わらないその仕草に、リンは小さく噴出した。
「・・・・ナル、まどかから仕事のメールが来ていますよ。」
「何?」
「プリントアウトしておきましたので。二月初旬には完成させて本部に直接持ってくるように、だそうです。」
「・・・・・。」
ナルに仕事リストを手渡し、リンは給湯室に声をかける。
「谷山さん、今度は私が淹れましょう。」
「本当ですか!?」
「ええ、このお茶は、淹れるときに茶葉に泡がついて上下するんですよ。茶器は透明ですし、よく見えるでしょう。」
「見たいです!!」
「安原さんもおかわりはいかがですか?」
「ぜひ。いただきます。」
なんだか、とても気分がいい。
自ら日本人と馴れ合うなんて、どうかしているのかもしれない。
不思議な誕生日だ。
こんな誕生日は、初めてだ。
「リン。」
不機嫌なナルの声に振り返り、リンは幾分楽しそうに言った。
「しっかり仕上げておいてくださいね。マーティンたちからも言われてますので。」
「・・・・・。」
再び黙り込んだナルに苦笑して、リンは給湯室へと足を向けた。
今度は、私からあなた方へ。
『ありがとう』のお茶を。
バースデーティー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Happy Birthday ver.Lin

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